【ウ】うしみつどきに思うこと
夜中に眠れなかったりすると通販サイトを見る。見てしまう。
この頃のお気に入りは書籍。何がいいって、原材料が紙だから、絶版のものを除けば値段はたかが知れている、というところ。
僕は芥川龍之介の評論が好きらしい。らしい、というのは自分でもまだ本当に好きなのか一過性の勘違いなのか判然しないがためのアレだ。
芥川の評論ばかり集めた本はないものかと密林を見渡すも、なかなかうまい具合に集められたものが見つからない。
AとBは入ってるけどCは入ってないよ、という本や、BとCは入ってるけどAは入ってないよ、という本ばかり見つかる。
綺麗にすっぽり丸々集めました、というのは、ページ数の問題なのか見つからない。重複する部分のある本を複数買うのもなんだか気持ちよくないし、複数冊に跨ずに、これ1冊あれば大丈夫だから、任せとけい、という親分肌な本がほしい。
そんな中で見つけたのが文庫版芥川龍之介全集。こいつの第7巻には芥川龍之介の評論ばかりが集められているらしい。
調べてみれば、AもBもCも収録しているとのこと。探し求めていたソレなのだ。
しかしここで、またつまらないこだわりが浮上する。全集の第7巻だけ持ってるってどうなの? という話だ。
内容だけ見たら申し分ないのに、表紙に書き出された「7」の数字だけが決まり悪く見えてくる。
僕はここに、人間の、――少なくとも僕の非合理性を見た。あまりにつまらなく、あまりに強い強制力!
僕は芥川小説を理解するだけの感性を持たないから、全集の他の巻を揃える気は毛頭ない。しかし、全集というのは全部集めてこその全集なのだ、という思い込みのために尻込みしている。
……ああどうか叱ってやってください。
案外、人間を支配しているのは本能でも利害でも理屈でもないのかもしれない。……