【ケ】蹴躓く――盛大に――
「昔はよかった」と言う人は絶えない。
「昔はよかった」の類は、僕が確認しただけでも明治時代から既に言われている。
こんな事を代々言い続けるのは人間の習性なのか、はたまた、本当に時代を遡るほど物事はよくなるのか。
「明日は今日より素晴らしい」と言う人もいる。「明るい未来」も常套句である。これらは、「昔はよかった」とは衝突する言葉であるように思われる。
はてさて、これらふたつの信仰は矛盾するのだろうか。
僕はここにひとつの真理を見出した。
前者も後者も、過去か未来を讃えるものである。両者、現在に満足していない模様である。
現在はかつては未来であったし、現在はいずれ過去になる。
こんなことでは蹴躓く。それも盛大に。足元を見よ。