もののイロハ

雑記オブ雑記

【ワ】ワトスンの働きぶり

ひたすらシャーロック・ホームズを読んでいる。もうちょっとしたマイブーム。

長さが程よいのがまたどんどん読み進めてしまうポイント。短編は決まって40ページ程度で、長編になると20ページ程度でうまく区切られている。

光文社文庫のものは読みやすさも抜群で、短編は鈍足の僕でも30分程度で1話読み終えることができる。アニメ感覚。

僕はややこしい性格で漫画、小説、ドラマ、映画、アニメなんかを見るときは作り手の思惑なんかを考えずには見られない。話の着地点だとか伏線、カット割など、エンターテインメントを享受するにはだいぶ損している感じが否めない。

ただ、そんな見方だからこそ気付ける凄さみたいなものもないわけではない。ほんのちょっぴりだけど。

気が付いたのは、いろいろなミステリーもので見る仕掛けが多く登場すること。例えば、通りかかった建物の二階に夫の姿を見かけたけれど様子がおかしいので向かってみるとそこに夫の姿はなく、ひとりの唇のねじれた浮浪者風の男がいて、他に人はなく、開きっぱなしになった窓枠には少量の血液、みたいな話。読者にはこの唇のねじれた男が夫を窓から突き落としたかのように予想させて、本当はその唇のねじれた男が夫の変装だった、というどんでん返し。

19世紀の古典ミステリーの手法だけど今でもこれまあまあ見かけるなあ、という感嘆。

そしてもうひとつ、ホームズの相棒ワトスンという、ホームズに比べると平凡な感性と能力を持った物語の説明役の存在。これも話を成立される上の技法として今では王道だけど、2世紀前にこの手法があったのかあという感嘆。

ワトスンがいるおかげでホームズの変人ぶりと優れた能力がくっきりと映るし、読者が疑問に思う点もワトスンが聞いてくれるし、事件の流れ的なものもワトスンが説明してくれるしで、ひとりでどれだけの役割を果たすんだっていう働きぶり。

ワトスン、いいリアクションするんだよなあ。