もののイロハ

雑記オブ雑記

【カ】カブトムシの生きた証

子どもの頃は虫が大好きだった。どんな遊びにも(強制的ではあるものの)付き合ってくれるし、謀反を起こしたとしても人や動物と違ってさほど怖くない(幼少の頃、アリを体に這わせて『巨人VS小人ごっこ』をした時にはあちこち噛まれて大べそをかいた例外もあるけど)。

そんなかっこうの遊び相手の中でもカブトムシは別格で、毎年夏になるとホームセンターで買ってきては飼育していた。

カブトムシは餌を置いたら飛びつくし、誰かと向かい合わせたらすぐにいきり立つ。シンプルで良い。クワガタなんかは気取ってしまってダメだ。餌にも飛びつかないし、なかなか戦わないし、カゴの中で悟ったようにぼうっとしている。ひよっているのだ。

ジュラシックパークを見てからというもの、虫パークの建設こそが僕の最大の野望となった。

最初は外にビニールなどを張って作ろうとしたがどうにも材料が足りないし、建築を手伝ってくれる仲間も不足していた。

やむなく家の中に虫パークの建設を試みた僕はわーっとすべての飼っていた虫を開放した。すべてと言っても8匹程度、壁中ビッチリの思い描いていたものとはかけ離れて、ただの迷い込んだ虫たち、といった図になってしまった。

さらに虫パーク断念で意気消沈していた瞬間を母親に見つかり現行犯大目玉。僕は放たれた虫たちを回収し始めた。

7匹目までは順調に見つかったのだが最後の一匹、大きく黒光ったビッグボス・カブトムシだけが見つからない。

家中くまなく探し回った挙句、リリースポイントから大きく離れた自分の部屋の壁にビッグボスを発見。

ふうっと安堵のため息をついてビッグボスを壁から引き離そうとした瞬間、ビッグボスから謎の体液が。

そう、お小水である。僕は飼育していた虫たちの謀反を止められなかった罪でまたも大目玉。

その後10年以上の歳月が流れてもあの時のお小水は壁にシミを残している。それを見ては懐かしむ僕。

生きた証というのはどういう形で残るか分からないものだなあ。