【ヘ】へそ曲がりが名作を読みました
名作と呼ばれる小説を読んであーだこーだ感想を言うなんて文学をアクセサリーにしたい人のすることだとか、変に突っ張って避けてきた。
太宰治なんて特に文学ツウを気取りたい人にもってこいの作家のような気がして必要以上に避けてきた。
それがまあ何となく手にとってみると面白いこと面白いこと。
読んだのは『斜陽』という作品。主人公のかず子がちょっと嫌なことがある度に死にたいなんてのたまうのはもうコメディだ。「お前すぐ死ぬ死ぬ言うな~」なんて軽くツッコミを入れながら読むと実に面白い。
かず子の思い込みの激しさは本人的にはシリアスな分、読み手からは滑稽に映った。
作中で戦後日本を「道徳の過渡期」と表現するくだりがある。この過渡期は今も続いているように思う。あるいは過渡期ではなくひとつのスタンダードになっている。
太宰作品が博物館的な価値しか持たなくなった時に「道徳の過渡期」は終わったと言える。そんな日は来ないかも知れないし、来なくてもいいと僕は考えている。
うんこみたいなルールにも実態にも実は意図されぬ働きがあって愛すべきこの世界が保たれている。
ジェンガで要らなそうなピースに手をかけたら意外と荷重がかかってて全然抜けないあの現象に似ているかもしれない。
どんな変革があったって世の中から気に食わないことはなくならないし、なくなるべきではないのだから、自分の姿勢をどうもっていくかがいちばん大事マンブラザーズなのだと、僕は思うのでござるよ。