【ト】トンネル掘り
生きることはトンネル掘りに似ている。
何をするにも体力がいる。愛より体力。これはきっと確かだ。
うまくいかない時はやたらと体力が削られる。変な話、うまくいっているときは動き続けたって体力が果てることはない。心の体力。
僕には体力がない。雀の涙と称しておこうか。びっくりするくらい少量だ。小さじ一杯。だから、うまくいかない時は別のトンネルを掘る。新しく柔らかい土は掘っていて楽しい。
ひとつのトンネルを掘り進める人は僕からは超人のように見える。コンクリートにぶち当たったって突き進むような友人を見ていると食べてるものが違うんじゃないか、いけない薬でも服用してるんじゃないかと思う。
そこら中に掘ったトンネルから出土するちょっとしたお宝たちが僕を生かしている。人の繋がりや技術、知識、好奇心。
25歳になった今でも新しいトンネルに手を付けている。いつかそこら中に掘ったトンネルたちが繋がってひとつとなり、超人の掘った長い長いトンネルに負けないトンネルになることを知っている。
人は誰でもトンネルを掘っている。もう頭打ちのトンネルを掘り進む人、エルドラドへ続くはずのトンネルを掘る人、休憩ばかりで進まない人。
トンネル掘り自体を楽しめる人こそがトンネル掘り名人なのだと思うこの頃でござるよ。